12月10日はナショナル・トカイ・アスー・デーです。
今年で5回目のアスー・デーだそうです。
この日ハンガリーのレストランではお料理と一緒に甘口ワインが振舞われ、ワインショップでも甘口ワインを楽しむことができるそうです。
トカイの貴腐ワインは甘いだけでなく、きっちりと酸味があるので、プリプリの食感で甘みのあるエビ類にオレンジソースを使ったお料理や北京ダック、豚肉の甘辛炒めを合わせると、旨味が引き立ちます。
フォアグラの前菜あるいはチーズやケーキと一緒にデザートワインとして味わう定番の楽しみ方の他にも様々な提案をしようとハンガリー人シェフが腕を奮っています。
さて、今回はトカイの貴腐ワインとアイリッシュ・ウィスキーの意外な関係性についてです。
ウィスキーにとって樽は非常に重要です。
酒造家が正しい木樽を使えば素晴らしいウィスキーができるが、選択を誤ると台無しにしてしまうと言われるほどです。
シェリー樽を使ったものが多いですが、樽にもいろいろあります。形状も強度も異なり、ヨーロピアンオークとアメリカンオークでも特徴が異なります。トカイの貴腐ワインに使用する木樽はハンガリアンオークで、これはヨーロピアンオークになります。
トカイ地方オレムス社の貴腐ワインの醸造に使った木樽を使用して、アイリッシュ・ウィスキーを造っているアスルー社のお話し・・
300年以上放置されていた建物に隠されていた倉庫団地をウィスキー愛好家達が見つけたことから2014年に設立にされたアイルランドのアスルー社では、トカイ・アスーの熟成に使った木樽(オレムス社で使われた中古の木樽)を使ったシングル・モルトのウィスキーを醸造しています。
アスルー社によると、2016年に最初のトカイの木樽を入手し、ウィスキーにどんな影響を及ぼすのか試してみたそうです。
トカイ貴腐ワインを熟成させた樽と、トカイのブルゴーニュ型の木樽は醸造所に届く前に白ワインと赤ワイン両方の熟成に使われていたようです。
サモロドニに使った木樽に新しいウィスキーと12年物のウィスキーを入れ、ブルゴーニュ型の木樽には12年物のウィスキーを入れて、この特徴あるトカイの木樽がウィスキーにどんな味わいや風味を与えるのか経過を観察しました。
主任酒造家オリ―・アルコーンは、熟成させたウィスキーはトカイの木樽と相性がよく良い仕上がりにはなるが、木樽の自然のフレーバーが繊細で新酒のウィスキーに負けてしまうため、やや難しいことに気が付きました。
結果的にトカイの木樽と熟成させたウィスキーの組み合わせは、ウィスキーに仕上げにシェリーの木樽を使うのとは違って、新しいウィスキーと出会うことになったようです。それにはリンゴ、洋ナシ、グレープフルーツ、パイナップル、更にレモンといった繊細なフレーバーやアロマがあります。
その後5年かけて、トカイの木樽にアイリッシュウィスキーを入れて熟成させ、創造3部作(クリエーション・トリロジー)の1本となっています。12年アメリカンオークの木樽で熟成させてから、トカイの木樽で2年間最後の仕上げをしています。 残念ながら、このアスルー社のシングル・モルト・アイリッシュウィスキーは日本では販売されていません。
他にもトカイの樽を使ったウィスキーとして記憶に新しいのが、10年熟成の「グレンモーレンジィ」をトカイ貴腐ワインの木樽に移し替えて、数年熟成させたグレンモレンジィ・ケークです。
2020年11月に限定販売したグレンモーレンジィ・ケークは、柔軟なウッドマネジメントで有名なウィスキーの革命家であり、グレンモーレンジィ最高蒸留・製造責任者であるビル・ラムズデン博士がバーボン樽とトカイの樽を使って造ったウィスキーです。
フルーツケーキのようなフルーティーで秀逸なウィスキーというのが一般的な評価でしたが、限定品だったことや楽しめる場所が限られていたことから、お目にかかることができませんでした。
また、販売されないかな。
ウィスキーとトカイ貴腐ワインのマリアージュでした。
お酒って奥が深いんですね。