ガール・ティボル・ワイナリー ~若き哲学者~

ガール・ティボル・ワイナリー ~若き哲学者~

ガール・ティボル・ワイナリーは1993年にハンガリーワイン界のアイコンと言われる歴史的な醸造家ガール・ティボル氏によって創設されました。
2002年には当時のハンガリー大統領から依頼され、日本の上皇両陛下がハンガリーを訪問された際の贈呈品用のワインを醸造しました。ワイナリーには当時の写真がまだ残っています。
2018年に25周年を迎え、ガール・ティボル氏の息子ガール・ティボル・ジュニアが確かな信念をもって10年以上ワイナリーを管理しています。
ガール・ティボル・ワイナリーでは、ワインも含め人生は楽しんで愛でてこそ素晴らしい!という考えのもと、ワイン造りに取り組んでいます。
併設するワイン・バーでは試飲ができ、ワイナリーを訪れる人々をジュニアの奥様グレタさんが美しい笑顔でワイナリーに迎え入れてくれます。

ハンガリーワイン界のアイコン、ガール・ティボル氏

ハンガリーのアイコン的存在ガール・ティボル氏は、ヨーロッパや北米のワイン界で長く愛されていました。
ガール氏は1970年代のトスカーナでワイン法の伝統格式にとらわれず、自由なワイン造りを行い、トスカーナワインを超越したといわれるスーパータスカン、サッシカイア、グラッタマッコと並び三大ボルゲリと呼ばれるオルネッライアの主任醸造家として深く関わりました。そして、その「オルネッライア1998」は、2002年ワインスペクテーター誌のワイン・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。
また、ガール氏は国内外のワイナリーでコンサルタントも務めており、2005年、南アフリカのワイナリーを訪問中に交通事故で亡くなったニュースは世界中またたく間に広がり、ヨーロッパのワイン関係者が悲しみにくれたのは記憶に新しいところです。
ガール氏に会ったことがある人々は、彼のハンガリーの伝統、エゲル地方に対する情熱と愛情に心を打たれたそうです。

故ガール・ティボル氏のハンガリーワイン界への功績のひとつに、エゲル地方でピノ・ノワールを初めて栽培したことがあげられます。「エゲルはハンガリーのブルゴーニュ」と呼ぶほどエゲル地方とピノ・ノワールの相性がよかったようです。

また、エゲル地方で初めて、土壌と気候にあったブドウを栽培することの重要性を説き、テロワールによるカテゴリー化をハンガリーでいち早く導入し、単一畑のワインを造ったという点も大きな功績です。当時のハンガリーではかなり大胆で実験的なワイン醸造をしていたようです。

その他にも、ハンガリーのワイン醸造技術の向上や、ワイナリー建設に助言を行い、ハンガリーのワイン業界全体の向上に多大な功績を残したことから、ハンガリーのみならず世界のワイン業界でハンガリーワイン界のアイコンとして、今でもその名は多くの人の記憶にあります。

ワイナリーの新しい時代の幕開け

ガール氏亡き後も彼の情熱は次の世代にしっかりと引き継がれています。
2011年より海外ワイナリーでの経験を積んだ息子ガール・ティボル・ジュニアがワイン醸造家、経営者としてワイナリーの経営をしています。亡き父の実験的なワイン醸造の知識と経験を土台として、若い新しい感性を伝統に吹き込み、単一品種のワインよりもエゲルの伝統であるブレンドの赤ワイン、エグリ・ビィカベールの醸造に情熱を注いでいます。
ガール・ティボル・ジュニアのワイン醸造哲学は「天空に弧を描く星のように正確に、取り組むこと、それが賞賛に値する仕事の仕方」と非常にストイックです。
ハンガリーワインの歴史上、重要な役割を果たしたガール・ティボル氏を父に持つジュニアは、ガール家に生まれたことを誇りに思うと同時に、その重責もしっかりと受け止め、エゲル地方のワイナリーを牽引する最も注目すべき若手醸造家として活躍しています。2015年より毎年、ハンガリーの醸造家が選ぶ最も素晴らしい醸造家に与えられる名誉ある「ワインメーカーの中のワインメーカー」賞の候補にノミネートされています。

個性的なワインができるエゲル地方の特徴

ガール・ティボル・ワイナリーのワインを特徴的なものにしているのは、エゲル地方の多様な土壌にあるでしょう。ブドウは地下34mの深さまで根を張ることができるので、地表の土壌だけではなく、その下の岩盤もワインのスタイルや味わいを形作るのです。土壌の中で粘土の割合が増えれば、より重めの凝縮されたワインになります。

このように土壌や気候を知るということが非常に重要で、ワインの起源を表現するために、できる限り澄んだワインを造ろうと絶えず努力を続けています。

また、エゲル産地の強みは、その多様性にあります。素晴らしいブレンドワインを造るための栽培するブドウの種類の多さや生産エリアということだけではなく、町、村、スパといった地形の多様さにも驚かされます。

土壌の多様性という点では、ガール・ティボル・ワイナリーが所有するほとんどの畑の土壌が異なるということでも明らかで、「ワインを飲めば分かっていただけると思う」とジュニアは言います。

「エゲル地方では美しく、かちっとした構造の強さを感じさせるテクスチャの白ワインと、最高にエレガントな赤ワインができます。ワインを造り始めた当初から私たちはテロワールを映し出す特徴を最大限に引き出すことに力を入れてきました。そのため、ブドウ畑の小さい区画を大事にしてきました。
まずSíkhegy(シーケジ)やPajados(パヤドシュ)でケークフランコシュ、カダルカ、ヴィオニエ、ピノ・ノワール、シラーを試しました。自分たちで栽培したブドウを使ってワインを造るという歴史はここから始まったのです。この二つの場所で畑を広げていき、今では50年という時間が経ちました。」

 ガール・ティボル・ワイナリーのブドウ畑

●SÍKHEGY
17.89 ㌶ 粘土、ローム、森林褐色土壌 南・南東
ピノ・ノワール、スルケバラート(ピノ・グリ)トラミニ(ゲヴェルツトラミネール)レアーニカ、ケークフランコシュ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニョン
深みがあり凝縮感がある、と同時にエレガント 特1級

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●PAJADOS
15.11 ㌶ 浸食ライオライト 南・南東・北西
流紋岩質凝灰岩
ケークフランコシュ、シラー、ピノ・ノワール、カダルカ、ヴィオニエ、ソーヴィニョン・ブラン、ピノ・ブラン
ミネラル分多い、豊かでスパイシー 1級

ワイナリーのシンボル「ラビリンス」

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ラビリンス(迷路)はガール・ティボル・ワイナリーのシンボルです。
エゲル地方の地下にある迷路のようなセラーを象徴しています。ワインバー・フュージョンの頭上にあるレンガのアーチも迷路のデザインに組み込まれています。迷路から抜け出るには優れた観察力と位置認識力、困難に打ち勝つ力、それなりの時間が必要となるのですが、この力は個人によって違いがあります。真剣に取り組むことで抽象的な人生の側面を認識することは困難ではないでしょう。迷路の中心は大いなる覚醒と知識の獲得を象徴しています。
「ワインを造る過程は迷路から脱出するのと同じように我々にとって非常に複雑で、神秘に満ちており、期待が膨らむものなのです。」とジュニアは考えています。

ガール・ティボル・ジュニアの想い

主任醸造家ガール・ティボル・ジュニアはワインへの想いをこう語りました。

「僕たちのワインを楽しむ人々には是非、ユニークでワクワクする経験をして欲しいと思っています。革新的であるべきと思うと同時に、ハンガリーワインの失われた伝統もこの手に取り戻し、過去と現在を融合させたワイン造りをしたいのです。
ナチュラルワインであっても質にこだわり、凡庸にはなりたくありません。
表現力豊かで細やかな、刺激的であるけれども誠実なワインを造らなくてはいけないと思っています。
私たちは、母なる自然の恵みを享受しているわけですから、環境に対する最大限の配慮をするのは当たり前のことでしょう。
私たちはブドウを有機栽培する過程から、日々多くの大事なことを学んでいます。」

 ■ガール・ティボルのワイン

☆白ワイン  ティティ・エグリ・チッラグ
★赤ワイン  ティティ・エグリ・ビィカベール

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