カダルカ ~ハンガリー最古のブドウ品種~

カダルカ ~ハンガリー最古のブドウ品種~

カダルカはハンガリー国内で最も論議を呼び起こしているワインでしょう。非常に気難しく、とてつもなく栽培に苦労をする品種で、安定した比較的温暖な年しか、それ相当のブドウを収穫することができません。ところが、ワイン愛好家の中にはカダルカの熱烈な信者がいます。

カダルカの起源は?

カダルカは古くから伝わるブドウ品種です。14世紀から15世紀に変わろうとする頃に、カダルカの栽培を習得したようです。セルビアから伝えられたのではないかとも言われています。クロアチアやセルビアで“スカダルカ”という名称で栽培されていた記録があります。“Törökszőlő”(トルコのブドウ)という名称でトルコで栽培されていたともいわれ、実際のところははっきりしていません。1744年にルーマニアでカダルカを使った甘口ワインが作られたと伝えられています。カダルカの起源について、確かなのはバルカンからパンノニアにかけての地域であることです。起源は、バルカン半島(アルバニア、スロベニア、モンテネグロなど)或いは現在のトルコと言われていましたが、現在のDNA鑑定でも、満場一致の起源についてはわかっていません。

ピノ・ノワールに似た黒ブドウの王女

果皮が薄いため雨に弱くカビや霜の被害に合いやすく、寒さにも弱い、栽培が困難な品種ということから、ピノ・ノワールとよく似ていてカダルカは黒ブドウの「王女」といえるでしょう。ブドウの受けるほとんどの被害に対して耐性がないブドウです。はっきりした特徴を保つことができず、突然変異をおこしやすい品種でもあります。これが栽培するものには悩みの種です。ブドウの実の衛生状態や生育の為、ブドウ房の周りの葉を取り除いたり、ブドウの生育に適切なバランスを目指し、樹勢をコントロールするキャノピーマネジメントは最大の注意を払って行われます。

カダルカ、ブドウとワインの特徴

一旦、ブドウが育ち、成熟する意志を持つと軽やかで、フレッシュ、エレガント、タンニンは感じられませんがスパイス感がまず最初に、その後、引き波のように果実味が口の中に溢れてきます。ステンレスタンク、木樽のどちらでも素晴らしいワインになりますが、熟成させるには必ず木樽を使う必要があります。バルカンかつてはドナウ平原全域で栽培され、作曲家フランツ・リストからローマ法王まで多くの有名人がカダルカのワインを楽しんだと言われていますが、時の流れで人々のワインの好みも変わり、徐々に他のブドウ品種の植え替えられてしまい、栽培量は減っていきました。ハンガリーでは細々と栽培が続けられ、最近見直されている品種のひとつです。

繊細なブドウは本当に良いヴィンテージしかワインを造ることができませんが、2017, 2018 は比較的暖かい年だった為、ワインを醸造できる量のブドウを収穫することができました。美しく熟成したブドウは糖度も高くなってから収穫することができました。

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中くらいのルビー色。スパイシーでエレガント、赤系フルーツの豊かな香りがします。瑞々しくスパイシー、ミディアムボディに適度な酸味、タンニンが少ないので飲みやすく、疲れないワインになります。瓶詰めから1~3年以内に飲む早飲みワインになりますが、収穫制限をし、丁寧に醸造したワインは長い熟成にも耐えることがセクサールドやその他のワイン産地で実施したバーティカルテイスティング(何年かの異なる生産年度の同じワインを飲み比べること)で実証されています。

カダルカはセクサールドワイン産地とエゲルワイン産地で作られる赤ワイン、ビィカベール(牡牛の血)のブレンド品種のひとつである為、両地方では重要品種となっています。

カダルカを使ったワイン


タクラーカダルカ2018

透明感のある美しいラズベリーレッドは濃いめのロゼのような色合いです。最初は控えめに感じられる苺、ラズベリー、赤スグリの赤系フルーツが口の中で豊かに広がります。胡椒のスパイス感がフルーティーな味わいを引き締め、時間とともにオーク樽のスモーキーさを感じます。軽やかでふくよか、しっかりした酸味が上品な赤ワインです。

タクラ―・ワイン・エステート

タクラー一家は1700年代からブドウ栽培とワイン醸造を行っており、現タクラー・ワイン・エステートはタクラ―・フェレンツ氏と二人の息子アンドラーシュさんとフェレンツJr.の3名のタクラー・トリオと呼ばれる3人体制で1987年に設立されました。フェレンツさんは2004年にハンガリーで名誉ある「ワイン・メーカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しております。フェレンツさんが作るワインはシルクのように滑らかで特徴ある香り、セクサールド地方のワインの特徴でもあるスパイシーさと果実味に溢れています。
「セクサールドのワイン醸造は今でこそ国内外でも知られるようになりましたが、ここまでくるのに決して簡単な道のりではありませんでした。1996年に本格的にワイン醸造を始めた時、素晴らしいヴィンテージだった1995年のワインをわずかですが4,000本醸造しました。1996年はあまり良い年ではなく、1997年にはようやくしっかりしたワインを醸造することができました。素晴らしいワインを造れるように毎日が挑戦です。」とタクラ―・フェレンツさん
セクサールド地方では2015年よりセクサールドで作る赤ワインのブランド構築の一環として、毎年12のワイナリーで結成するギルド集会で各ワイナリーが代表的ブドウ品種カダルカ、ケークフランコシュで作った赤ワインとワイナリーが作った伝統的なブレンドビィカベールをブラインドテイスティングで評価します。そして12のワイナリーのうち8ワイナリーが認めたワインはギルドがハンガリーのボトルメーカーに作らせた特製ボトルに瓶詰めすることが認められます。特製ボトルはブルゴーニュタイプとボルドータイプのハイブリッドのような美しい形です。

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選ばれるワインはテロワール(気候・土壌・作り手)の力を最大限に生かし、セクサールド地方のブドウ品種カダルカ、ケークフランコシュの特徴を表現していると認められたものに限られます。
タクラ―・ワイン・エステートの造る「タクラ―・カダルカ」はギルドにその品質を認められ、特製ボトルに瓶詰しています。

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